わたり終えるか、転げ落ちるか
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■続いて安岡孝一先生で松本清張「点と線」。推理小説ということでネタバレに配慮したためか、「鉄」の話に徹しておられました。それにしても先生の、誰がどう見てもおかしい/のに誰も気づかないこと、を発見し、それをわかりやすく伝える、という例の手法は今回も健在。
点と線点と線
松本 清張

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・小倉or広島で生まれる…出生からしてすでに「ミステリー」(会場笑)。
・朝日新聞退職後の作品。文学でメシが食える、という確信。
・「点と線」は雑誌「旅」に連載。
・1958年に単行本化。1960年にカッパノベルス化。いずれも爆発的売れ行き。

点と線―長編推理小説 (カッパ・ノベルス)点と線―長編推理小説 (カッパ・ノベルス)
松本 清張

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・「国鉄トリック」の草分け的存在。
・あさかぜ。初の夜行特急列車。ブルートレインの先駆け。
・1957年1月に15番線に停車するように。前月までは14番線に停まっていた!…ので「点と線」は1957年1月以降のお話。
・鳥飼警部の競輪場前に至るルートが不自然。もっと効率的に行ける方法がある。
・江ノ電のくだりも不自然。駅を降りてすぐ大仏が見える、のはどう考えてもムリ。
・ダイヤがかなり異なる。国鉄の寝台特急は全廃。福岡市内線も全廃。都電の路面鉄道も全廃。雑誌「旅」は休刊。江ノ電は当時のまま残っているので比較的想像しやすい。
・となると再読に必要なのは?1957年の時刻表。「国鉄時代」等の鉄道回顧雑誌。鉄道写真集。
<関連>
「都営交通100年のあゆみ」「都営交通100周年 都電写真集」 「都営交通100年の軌跡(DVD)」の発売 | 東京都交通局

質疑の時間にも「『鉄』の話しかしません!(笑)」とあくまで「鉄道」のお話にこだわった安岡先生でしたが、個人的にものすごく興味があったのは「点と線」で繰り広げられた反体制人間ドラマ、と言いますか、例えば鳥飼警部のあの立ち振る舞いについて、安田という男の考え方についてどうお感じになったのか、というような話。理系と文系の両極端をあっち行ってこっち行ってしている先生だからこそ、聞いてみたかった気も。いずれお伺いできますよう…!

■トリはクリスティアン・ウィッテルン先生。「鉄道事故」はとても短い短編で、全文を配布していただきました。私が入手していたバージョンとは別バージョンで、「2度おいしい」結果となりました(かなり異なる翻訳でした)。個人的には、事故によって、秩序が一旦リセットされ、その後再秩序化されるまでの人のココロの動きなるものの生々しい描写が何とも印象的で、短いながらも何度か読み返すほど気に入りました。「なにか話せって?しかしなにもないんだがな。よろしい。それじゃひとつ話してみよう」という「鉄道事故」の冒頭とまったく同じ文で講演はスタート。ニクイ演出です!
トオマス・マン短篇集 (岩波文庫 赤 433-4)鉄道事故:トオマス・マン短篇集
トーマス・マン

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・「車輪の下」にしようか迷ったが…あれは馬車であり、電車ではない。

車輪の下 (新潮文庫)車輪の下
ヘルマン ヘッセ Hermann Hesse

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・「ブッデンブローク家の人びと」は最初あまり評価されなかった。
ブッデンブローク家の人びと 上 (岩波文庫 赤 433-1)ブッデンブローク家の人びと
トーマス・マン 望月 市恵

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・1933年スイスへ、1938年北米へ亡命。1933年にナチス政権ができたことが原因。
・駅長さんが帽子と共に権威を失った→消防車などの到着で状況が回復して、「父なる国家が対面と名望を取り戻すにいたった」…これは第一次大戦前のドイツの状況をよく表わしている。
・国へのおそれ/希望。頼りだった国家が無力に。
・車掌が負傷した自分の足(=自分のこと)しか考えていないシーン。

良くも悪くも(…失礼!)いちばん「大学の授業」という感じのプレゼンでした。私は好きです、こういうの。

■「地下鉄のザジ」では、近代(=オトナに都合の良い道徳)に逆らい・抗い、それらにとことん「オケツぶー」のザジ、「点と線」では体制(=国の発展のためには贈収賄もアリ)に逆らい・抗い、「空白の4分間」を見抜いた鳥飼警部、「鉄道事故」では、偉そうにしてた紳士(=近代)が事故で「強者の権利もすっかりだいなし」になってしまい、一旦リセットされ、フラットになる様子、がそれぞれ興味深かったです。近代とか、秩序とか、体制とかに、やはり文学というものは抵抗し続けるのだなぁ、とあまりにも単純かつどこにでもありそうなまとめをしそうになった帰り道、「抵抗オケツぶー」という声がどこからか聞こえてきました(=ヤワなまとめをしようとしたら、ザジ化した同僚にたしなめられました)。
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