わたり終えるか、転げ落ちるか
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村上春樹さんの「偶然の旅人」という短編の冒頭に、次のようなくだりがあるのですが、先日のesqライブでちょっぴり似たような経験をすることができました。以下、またもやネタばれ含みますのでご注意!

 だからその二曲が今、目の前で実際に聴けたら、言うことないんだけどな、と思ったわけだ。彼がステージを降りて、僕のテーブルまでまっすぐ来て「やあ、君、さっきから見ていると、何か聴きたい曲がありそうじゃないか。よかったら二曲ほどタイトルをあげてみてくれ」と言ってくれないかなと考えながら、じっと彼の姿を見ていた。もちろんそれが見込みのない妄想であることは承知の上で。
 しかしフラナガン氏はステージの最後に、何も言わず、こちらをちらりと見ることもなく、その二曲を続けて演奏してくれたのだ!最初にバラード『スター・クロスト・ラヴァーズ』を、それからアップテンポの『バルバドス』を。僕はワイン・グラスを手にしたまま、あらゆる言葉を失った。ジャズ・ファンならわかっていただけると思うが、星の数ほどあるジャズ曲の中から、ステージ最後にこの曲が続けて取り上げられる確率なんて、まさに天文学的なものであるはずだ。

東京奇譚集偶然の旅人;東京奇譚集
村上 春樹

by G-Tools
当日僕は体調が優れず、聴く側のコンディションとして、あまり良いものではありませんでした。それでも「どうしても観たい!」という思いからフラフラと渋谷へと駆けつけ、開演時刻ギリギリに会場入りし、椅子こそもう空きがなかったですが、三谷さんを真正面から見ることができるポジションで壁にもたれて立ち、開演を待ったのであります。

そして間もなく、演奏はスタートしました。

序盤戦から「この曲をナマ再現で聴けるなんて!」「『去年の十周年記念ライブで、何でこの曲を外したんだ?』と思ってた曲を今日ここで聴けるなんて!」「うーん、こんなに惜しげもなくニュー・アレンジを披露してくれるなんて!」…の連続で、「今日は特別な一夜になるぞ」っていう確信は強くあったのですが、なにぶん先にも書いたように、体調があまり良くなかったので、ちょうど「READY TO LOVE AGAIN」のニュー・アレンジ・バージョンが演奏され、後半で飯塚さんのギターソロがキュイキュイ鳴っていた頃に、

「あぁ…ちょっと今日はしんどいな…相変わらず飯塚さんのソロすごいってのに…ここで『想い出にかわるまで』のあのイントロとか炸裂しないかな…でも演るとしたらアレンジ変えてくるだろうし、それはないだろうな…」

…と思ってたら(あのイントロ)炸裂!ここで思わず壁にくっつけていた背中を離しました。

「うへぇーびっくりしたぁ…想いが通じたのか?なんて都合のいいことあるわけないか…でもまさか原曲アレンジで来るとは…ここで『Baby, it's you』の原曲アレンジとか期待してみたりなんかして…なんて…」

…と思ってたら(あのイントロ)炸裂!ここで僕の涙腺の蛇口くんが全開に…。

いやーこれには僕も「あらゆる言葉を失った」状態でした。もちろん、「星の数ほどあるジャズ曲の中から、ステージ最後にこの曲が続けて取り上げられる確率」に比べれば、「三谷さんが80年代に作曲した曲が、中盤戦に、希望通りに二曲続けて演奏される」という状況は、それほど珍しいことではないかもしれないです(しかも『想い出にかわるまで』も『Baby, it's you』も人気の高い曲ですし)。要するに、ただの「痛い」ファンのたわ言なのかもしれないです。それでも、もしあのタイミングで、あの二曲が(僕の希望通り、しかも立て続けに)演奏されなかったら、僕はおそらく、目の前で演奏されている最高の音楽を、最低の体調のまま聴き続けていたかもしれなかったのです(最悪の場合、席を外していたかもしれなかったのです)。そう思うと、何かしら「偶然によって導かれた必然」のようなものを、先日のライブに感じざるをえなかったのです。

もちろん、こんな「ただの偶然(=僕にとっては、それはもう特別な『偶然』ですが)」を書き綴って終わり、みたいなほど、先日のライブはヤワなものではなく、そのesq(=Essentially Superior Quality)なサウンドについての感想は、またじっくりと書いてみたいと思います。

とりあえず、この「偶然」をどうしても書きたかったということで…。
コメント
この記事へのコメント
Baby,It's You・・・
>啓介さん
ご無沙汰しております。今回、残念ながら秋の大BANDライブに参加できなかったのですが、とっても良いSETだったんですね!特に啓介さんに『Baby,It's You』を聴いていただけて良かったです。以前聴いちゃった自慢しちゃってましたので(笑)。
ところで私が以前聴いたものは、PIANOだけのアレンジだったんですが、今回は大BANDということでBANDアレンジだったのでしょうか?
2006/11/24(金) 08:22 | URL | あると♪ #Tu5kmyeo[ 編集]
あるとさん、こんにちは(^^;。「聴いちゃった自慢」、ありましたね(笑)。弾き語りバージョンもぜひ聴いてみたいのですが、今回はバンドアレンジでした。ほぼ原曲通り(=「VOICE」「ROCK SHOW」)でした。

「夢伝説」や「今夜だけきっと」とかではそれほど思わないのですが、健ちゃんや添田さんが演奏する「Baby, It's You」って何かこう、「画竜点睛を欠いた」感じがずっと(僕の中では)してたんですね。まさに「もうチョットだけ何か足りない」という。音色的なこととかももちろんあるんですが、それだけじゃない何か、なのですが(うまく言えないですけど)。そこを今回久々に三谷さんのバンドバージョン「Baby, It's You」を聴いて、今までポッカリ空いてた「溝」みたいなとこが久々にきゅーっと潤ったと言いますか、何かそんな感激があったんです…ってまたもや「痛い」ファンのたわ言(汗)。

僕まだesqの「永遠への誓い」と「All I Do」を聴いていないので、次はぜひ聴きたいな、と思いました。
2006/11/25(土) 11:41 | URL | 啓介 #6OcbfI92[ 編集]
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