わたり終えるか、転げ落ちるか
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おやつにたこ焼きを食べながら思い出した、昔書いた超短編。タイトルは「たこ焼きを二箱買う」。そのまま!

僕にとって小説って「何か言いたいことがあるんだけど、ストレートに表現せず、できるだけ遠回りをするのですが、それでいて、ストレートに表現するより効果的に誰かに伝わるもの」なんですけど、↓を書いているとき、僕は何を言いたかったんだろう、と思うとよくわからなくなりました。

 今夜も駅前には、いつものたこ焼き屋が来ている。取り立ててこれと言った目新しさのない、いたって標準的なたこ焼きを販売している。屋台を前に慣れた手つきで黙々とたこ焼きを引っくり返し続けるその男性は、どことなくクエンティン・タランティーノに似ているとかねてから僕は思っている。
 僕はいつもと同じように、二箱注文する。一箱八個入りだから、計十六個。クエンティン・タランティーノは目を合わせることもなく、僕に「八百円」と告げる。僕が千円札を一枚取り出すと、クエンティン・タランティーノは「今、釣りがない」と言うので、「釣りはいらない」と僕は応える。クエンティン・タランティーノは何も言わずに千円札を受け取り、機械的に二箱分のたこ焼きをビニールの袋に入れ、僕に手渡す。

 僕はビニール袋を片手に、いつもの路地裏までやって来る。相変わらずひと気がなく、しんとしている。あたりは暗く、かすかにものが見えるほどの明るさしかない。僕はたこ焼きの入った透明パックをビニール袋から取り出し、ふたを閉じる役割を果たしていた輪ゴムを外す。ふたが「ぱかっ」と開く。それらを並べて地面に置く。

 ぽん、ぽん、ぽん、ぽん。ぽん、ぽん、ぽん、ぽん。
 ぽん、ぽん、ぽん、ぽん。ぽん、ぽん、ぽん、ぽん。

 するとたこ焼きは、次々と透明パックから飛び出していく。やがて十六個すべてがそこから飛び出し終わると、いったん一列に並ぶ。とても行儀良く並んでいるように見える。一列になったたこ焼きから立ち込める湯気。まっすぐひゅるひゅると立ち込める湯気。ちょっとした幕に見えなくもない。なかなか良い眺めだ。そして湯気が落ち着いてきた頃に、たこ焼きはおもむろに右回りに弧を描き出す。列車がカーブを通過するときのように。

 十六個のたこ焼きは、僕の足元を中心にくるくるくるくると円を描き続けている。ソースとマヨネーズと青のりを周りに飛び散らせながら、ただひたすらに回転している。その回転は次第に加速する。速度を増したたこ焼きの弧は、その残像を残すほどにすらなる。そしてその残像はどんどんと長さを伸ばし続け、数分後には僕の足元をすっぽり囲む円となってしまっている。見ようによっては腰ではなく足元で、少し風変わりなフラフープをやっているように見えなくもない。

 次第にじわじわと速度を落としていく十六個のたこ焼きは、弧を描くのをやめ、再び直線の列に戻る。そして回転していたときの速度が嘘のように、ぴたりとその前進を止める。ぱち、ぱち、ぱち。僕はいつものように、整列した十六個のたこ焼きに拍手を送る。拍手が止むと、路地裏の闇の中から何者かに引っ張られたひものように、たこ焼きの列は「ひゅっ」とその姿を消してしまう。

 僕は空になった二つの透明パックを重ねて拾い、ビニール袋に入れる。そして路地裏から明るいところに出てすぐのところにあるセブン・イレブンのごみ箱にぽいとそれを投げ入れた後、僕はゆっくりと家路につく。

時間を見つけて、また書いてみようかな、なんて思ったりしました。どうせ誰も読まないだろうけど。ぶつぶつ。ふん。
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